大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)509号 判決

被告人 村松清作

〔抄 録〕

弁護人の論旨について。

原審証人小林春夫の証言及び同人作成の鑑定結果回答についてと題する書面(記録第一一〇丁以下)によれば本件被告人が山田孝に譲り渡した覚せい剤粉末百瓦は塩酸フエニルメチルアミノプロパンを七、八十パーセント含有していることが認められるのみで、爾余の証拠によつても右覚せい剤が百パーセント純粋な成分のものということはできない。しかし原判決が「被告人は山田孝に対し覚せい剤の粉末である塩酸フエニルメチルアミノプロパン約百瓦を譲り渡した」旨判示したのは措辞必ずしも妥当ではないが、その趣旨とするところは塩酸フエニルメチルアミノプロパンを含有する粉末約百瓦を譲り渡したというにあることは原判文後段の弁護人の主張に対する判断を併せて考えるとき明白であるから、原判決は所論のような理由のくいちがいがあるものではない。而して覚せい剤とは覚せい剤取締法第二条に規定するとおりフエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及びその塩類並びにこれらのいずれかを含有する製剤をいうのであるから、本件覚せい剤粉末が純粹な塩酸フエニルメチルアミノプロパンの粉末であるとそれを含有する粉末であるとを問はず覚せい剤たることに変りはなくそこに含有されている塩酸フエニルメチルアミノプロパンの量を確定しない以上覚せい剤に非ずということはできない。所論は仮に本件粉末百瓦中に塩酸フエニルメチルアミノプロパンの含有量が一万分の一程度であれば覚せい剤とはいえないとするのであるが、本件に於ては塩酸フエニルメチルアミノプロパンの反応を検出し得たのであり、かかる反応を検出することができたものに在つてはその含有量が所論の如く微量のものとはいえないこと前記小林証人の証言に徴して明らかである。所論後段は仮定に基く主張をするものに過ぎない。それ故原判決が被告人の所為につき覚せい剤取締法第四十一条第一項第四号、第十七条第三項等相当法条を適用したのは正当で法律適用に誤はなく、論旨はいずれも理由がない。

(近藤 吉田作 山岸)

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